第35章 マッサージですよ
「……あの、無理そうでしたら……」
燭台切「……主、いい機会だから教えておくね」
これ以上困らせてしまうのも可哀想なので早々に諦めようとしたところで燭台切さんは私の前に正座をすると私の頬に触れてじっと見つめてきた。
だから私も目をそらさずに見つめ返す、が……顔がいいので照れてしまう。
にらめっこしようなんて誘われたとしても勝てそうにない顔だ。
顔がいい。それしか言えない。
男前で美しくて……シンプルな言葉しか浮かんでこないのだが、一番の言葉はあれだ。
とにかく顔が良すぎる。
燭台切「主、まぐわうっていうのは……そうだな……主が石切丸さんとしていたこと、って言えばわかってもらえるかな?」
優しく微笑みながらそう教えてくれた燭台切さんに、血の気が引くような顔が熱くなるような変化に私は固まる。
いま、なんと……石切丸さんとしていた、こと?
「…………し、知らない!私は知らないもん!」
なぜここでその話をするのだ!
忘れられないことでも意識しなければ思い出さないようなことをなぜ!
私は自分の手をグーパーしながら恥ずかしさをまぎらわせようとするが片手を燭台切さんに握られてしまう。
なぜ握る。
燭台切「嘘はいけないよ?ほら、ここ……薄くなっているけど彼のものっていう痕が……」
「ひぅッ……!」
すすっと首筋を指で撫でられると変な声が出てしまった。
咄嗟に口元を押さえて後ずさると背中が壁とこんにちはをすることに。
これは小動物が狼などに追いかけられて逃げ場を失うあれだ……
「あ、あのッ……燭台切さ……」
首筋や身体中にあった痕は、薄くなっているのは確かではあるがよく見ないことにはわからないくらいなのでなぜわかって……。
匂い、かな