第32章 連絡
「その調子じゃ国民的アイドルとか有名どころにも声かけてそうですね」
『仕事で忙しいから無理って断られたわ』
声かけたんだ……。
国民的アイドルと会えたことがすごいのだが……この人、何者なんだろう。
そもそも政府の人ってどうやってなるんだろうか。
会社みたいに面接して、とか……謎だ。
政府の会社があるのなら見学でもしてみたいところではある。
どんな人が勤めているのかも気になるし。
『なんや、アイドルとか興味あるん?』
「いえ、あまり……勉強ばかりでテレビも雑誌も見る機会なんてありませんでしたから」
『面食いそうやから、てっきり隠れファンやと思たのに……』
彼らを見て自分が面食いだと自覚したというのに私より先に面食いだと気づかれていただなんてちょっと複雑。
話すだけというのも手が寂しいので政府の人からもらった説明書みたいな分厚い紙を机の上に置くと適当に見始める。
一応役には立ってくれているが、この本丸の見取り図らしいものだけが理解できないのがマイナスだ。
もっとわかりやすいのがほしい……。
「……気になっていたんですが、何であなたは私を……気にかけてくれるんですか」
『そりゃぁ……おまんに惚れてるからぜよ』
「ごめんなさい」
『うわ、フラれた……まあ、あれや。担当っていうのもあるんやけど審神者に誘ったのは俺やし面倒見るのは当たり前ってやつや』
政府の人はそう言うがこの人がやったことは仕事だ。
審神者としての適性を私に感じたから私を審神者として選んでくれた。
それはちゃんと理解している。
だからこそ本当に何を思って私を気にかけてくれているのかわからないから……怖くもある。
「……そ、ですか」
でも、それを言おうとは思わない。
彼が言ったことを私は信じるしかないのだ。
たとえその言葉の裏になにかを隠していたとしても。