第26章 落ちました
桜の花びらを片つけながら、ついでに他に落とし穴がないか探っておく。探るといっても危険なので歩いて確かめたりはしない。
できて小石をそこら辺に投げる程度だ。
きっと落とし穴も人がその穴の上に乗らないと落ちたりしないようになってあるだろうが……こういうのは気持ちの問題だ。
できればもうないほうが一番いいが。
誰のいたずらかはわからないがこういうことをするのは……なぜだか鯰尾の顔が思い浮かんだが彼だって意味もなくこんなこと……しない、と信じたいな
「山伏さんはここで何をなされていたのですか?」
山伏「誰かの助けを求める声が聞こえたのでな。少し様子を見にきたのだ」
「……本当に感謝します。あれで誰にも気づかれなかったら……泣いていたかもしれませんね」
狭い場所で、いつ出れるかわからない不安を長く感じて普通でいられるほど私は強くない。
狭いとなにもすることもないから心に余裕が持てそうにないのだ。
本当に……感謝している。
現世にいたときより弱くなっているな…。
山伏「……主殿、傍に行っても良いか」
「え……あ、はいどうぞ?」
山伏「失礼する……手を借りても良いだろうか?」
「手を、ですか……」
なんだろう。
すっごい真剣な顔で言われると何かあるのだろうかと不安になってくる。
何か憑いていたり、とか……
「こんな手でよろしければ……」
片手を差し出すと山伏さんが割れ物でも扱うように優しく触れてくれる。
え、な、なんなの。
くすぐったさと緊張と不安とで鼓動は早くなりそれはなぜ高鳴っているものなのかわからなくなっていた。
ふに、っと指や手のひらを指で揉むように触れられるとくすぐったくて思わず声が漏れてしまいそうにもなる。
「あ、あの山伏ッ……さん」
山伏「主殿の手は暖かく柔いのであるな」
「えっ……そ、そうです……ね」
大丈夫。
落ち着け、落ち着くのだ。
こんな場所で発情……何かあっても困る。
「あの、そんなに触れられていると私も……恥ずかしいと感じてしまうのですが」
山伏「っ……すまぬ!不快であったか!」
ばっと手を離されると手を引っ込めて苦笑いを浮かべながら大丈夫だと伝えておく。
驚きはしたが不快ではない……ドキドキはしますけどね。