第26章 落ちました
誰なのかもわからず、穴から出してもらえたが近くで見てもやはりわからない。
まんばちゃんみたいに布を被っていたならまだしもこんな存在感の強い人を見たら忘れるわけがない。
でも相手は私のことを知っている。
不思議だな……。
「あの、助けていただきありがとうございます。初めまして……ですよね。私はなつみといいます」
山伏「カカカカカ!拙僧は山伏国広と申す!」
国広……まんばちゃんと一緒か。
ご兄弟なら……雰囲気的なものが真逆で面白いね。
お坊さん……ではないかな。
修行僧とかそういう感じの人なのだろうか。
「山伏さん、ですね。あの……私は審神者なんですけど……大丈夫ですか?」
山伏「……主殿は何も気になされるな。今の主は貴殿だ。そう怯えずとも胸を張って私が主だとドンと構えていればよい!」
「……は、はい!あ、主……私が主です!」
にかっと笑った山伏さんに私も自然と笑みが溢れた。
前任のことがあるから怖がらせないようにと考えていたが心配しすぎなのかな……傷ついている人は確かにいるけど、それでもみんな私に普通に接してくれている。
なのに私がこうではよくないな。
「改めまして山伏国広様。私はここの主をさせていただいてる幸村なつみと申します。よろしくお願いしますね」
姿勢を正して一礼をすると山伏さんは何も言わなかった。
言わなかったというか……
「山伏さん……?」
山伏「……あ、すまぬ。主殿を美しいと思ってな」
「…………え、と……」
顔中に熱が集まるのがわかる。
ただ単に嬉し恥ずかしいというやつだ。
不意打ちというものには弱いのだがこうもストレートに言われると照れてしまうものがあった。
黙っていれば綺麗とか最近言われた気がするけど美しいとか……う、美しいとか……え、どうしよ
「あ、と……っ褒めていただきありがとうございます……山伏さんは、とても男前でかっこよくて……なんだかドキドキしてしまいます」
本音を口にすると山伏さんの方からぶわっと桜の花びらが舞う。
最近も見たな……この桜の花びら。