第20章 口吸い
石切丸「そうだね。私は君が好きだよ」
「ですよね…………え」
勘違い女と言われると思っていたので、まさか好きだと言われるとは思ってなかった。
え、好き……?
まあ、想いを寄せられて悪い気はしないが……神様に惚れられるほどの美貌は持ち合わせていない。
石切丸さんにお姫様抱っこをされたまま私は考えた。
初対面の時、惚れましたって感じはしなかったために考えられるのなら勘違い。
あれだ、吊り橋効果みたいな……もしくは石切丸さんに初めてあったのはあの二人に遊ばれていたときだから……もしその時、瞳の色が変わっていたり匂いがあったとするなら、原因はそれだ。
私の変な体質みたいなものの影響から好きと勘違いしたに違いない。
そうだとしたら……土下座したいくらい謝りたいな。
「あ、あの石切丸さん……きっとそれは勘違っ」
石切丸「ん?なんだい……主」
「……いえ……なにも、ないです」
ゾクッとしてしまうその美しい瞳を見て私は、何も言えなくなった。
言ってはいけないと、そう思ったから……
それからは何も言わずに黙って身を委ねていた。
食事所である食堂につくと下ろしてくれるが腰に手を回され、離れることは許してもらえなかった。
私にとってこの人は……怖い人、なのだろうか。
この人が何を考えているのかわからないから知りたいとは思うけど、近くにいたら危険な気もする。
「……変なの」
私と石切丸さんは特別なことをした。
恋とか恋愛とかよくわからないけど少なくとも私は石切丸さんに対してそういう感情は抱いていない。
けど、石切丸さんは私のことを好きと言う……本気なのかどうかのかわからないけど、信じても……いいのかな。