第20章 口吸い
石切丸「逃げることないでしょ?」
「に、逃げたくなるんです!変態!バカ!」
石切丸「主……君には言われたくないなぁ」
「どういう意味よ!鯰尾助け……い、いないし!」
逃げようとしたが数秒で捕まった。
いや、逃げようと考えたのを石切丸さんは気づいていたのだろう……こんなことなら出会った瞬間に逃げるべきでした。
私の腕を笑顔で掴んでいるが、私にはその笑顔がいいものには見えない。
鯰尾に助けを求めようにも、いついなくなったのか私たちの近くには誰もいなかった。
多分、夕食時だからみんな一つの部屋に集まっているだろうし助けを乞おうにも誰もここを通らない可能性が高い。
なんで、食事の時だけみんな集まるのかな!
一人や二人、みんなで食事?はっ、笑わせんな……みたいな子がいても私はいいと思う!
石切丸「主は私のことが嫌いかい?」
「ぬっ……嫌い、ではないですよ。ただちょっと……石切丸さんが怖いです」
石切丸「怖い……?」
「……なんで、あんなことするんですか。私にはわかりません……三日月さんも小狐丸さんも……私が悪いんですか。私の異性を惑わすとかいう目が、匂いが悪いんですか」
本当にわからない。
私にはそういうことを求められるほどの魅力はないし、ただ女だから……欲のはけ口にちょうどいいから、なのかわからない。
普通に恋愛して、結婚して、子供が生まれてって……些細な願いがとても遠いものに感じる。
私はよく知りもしない人に初めてをあげた。
キスだって手入れのためだからと好きとか自分の感情は無視してやった。
鯰尾にも……そう求めるから、って……いつからか私は軽い女になってしまったような気がする。
どうせ初めてじゃないし、一回や二回キスも性行為だってしたって減りはしない……そう、考えてしまった。
苦い、苦くて……痛い。