第20章 口吸い
「っ!」
咄嗟に鯰尾の口元を手で軽く押す。
鯰尾「やっぱり嫌でしたか……?」
「ち、違うの……私こういうの慣れてないし……ちょっと怖い」
既にキス以上のことも済ませている身なのにキスが怖いなんて変だけど、気持ちが追い付かない。
石切丸さんとのことは自分がどうかしていたのだ。
こんな気持ちで、鯰尾とキスするなんて失礼だし……怖い。
鯰尾「……すみません。やめておきます……主を怖がらせてまでしたいことでもないですから!」
「鯰尾……っ…私、頑張るって……鯰尾の話聞くって言ったのに……」
鯰尾「それとこれとは別ですよーほら、今のは忘れて一緒にご飯食べに行きましょうか」
役に立ちたい。
みんなの幸せのために頑張るって決めたのに……なにも、できなかった。
情けないな……。
鯰尾の手に両手で触れるとそのまま口元に持っていき、指先に口付けてみる。
鯰尾「えっ!あ、あの……主……?」
「……鯰尾が、何でキスしたいって言ってくれたのかわからないけど……冗談じゃないって言うなら私、頑張ってみてもいいかな」
それが、鯰尾の望みなら叶えてあげたくなる。
誰とでもキスするような軽い女になりたくない、キスは特別で……大事な人とするものだってずっと思ってきたけど鯰尾だって今では私の大事な人の一人だ。
キスの一度や二度、させたところで……減りはしない。
鯰尾「……主、本当すみません。そこまで悩ませるつもりはなかったんですけど……」
「が、頑張るよ私……恥ずかしいしちょっと怖いけど鯰尾が、したいって言うならなんだってする」
鯰尾「落ち着いてください。本当、俺大丈夫なんで!」
私が一度断ったから鯰尾は、もういいからと笑ってくれる。
私が嫌がることをしようとはしない優しい鯰尾。