第19章 穏やかな日
「それじゃ、あっちにいるね。私が近くにいたら……出てこないだろうし」
悲しいことだが、あのショタは私を警戒しているので近くにいるだけで邪魔になりそうだ。
すぐにでも仲良くなりたいが無理なら時間を空けてからまた挑もう。
そう思って鶴丸さんの背を押しながら縁側の方に戻ることにした。
前田「あ、主君。黒い髪もとてもお似合いでしたが、その髪もとても美しくて素敵ですよ」
「…………鶴丸さんもあれくらい言ってよ」
鶴丸「……栗のように美味しそうな髪色だな」
「前田くん、ありがとう!燭台切さんがおやつ作る的なこと言ってたから後で食堂に行ってみてね」
鶴丸さんの腰をバシン、と叩いてから前田くんにお礼をいう。
栗のように美味しそうな髪、なんて言われたのは生まれてはじめてだ。
私の髪色じゃないし当然だけど……でも、あのショタ、さすがはロイヤルプリンスの弟って感じがするな……将来有望だ。
「それじゃ、出てくるまで待とうか」
鶴丸「君はあれだな。まいぺーすってやつだな」
「急いでなにかをしても、何かしら抜けてしまうものだし一つ一つ確実にやっていかないと……明日からは鶴丸さんにも働いてもらうから覚悟していてくださいね?」
ニコッと笑ってそう言うと鶴丸さんも笑い返してくれる。
今はゆっくりとでもみんなと仲良くならないといけない。
信用してもいない人についていこうとは思わないからね……。
前田くんの方を見ると、知らないショタを茂みから出してくれていた。
仕事が早い。
近づきたいけど近づいたら逃げられるだろうし……でも、あの擦り傷まみれの腕とかなんとかしてあげたいし……もう少し待つことにしよう。