第1章 始
「清光、他に誰がいるかわかる?」
加州「えっと……みんなあの日から見てないからなぁ」
「前任のこと、聞いても大丈夫そう?」
加州「……うん」
前任、って言っただけで表情が暗くなるのでまだ聞かない方が良さそうだよね。
もう、無理でもなんでも政府の人に前任のことをすべて聞かないといけないな。彼らの口から話させるなんて行為、私が耐えられそうにない。
「やっぱりいいや。ねえ、清光はきれいな爪してるね?自分でしてるの?」
話をそらすようにずっと気になっていたことを聞くことにした。
マニキュアが少し剥げてはいるけど手先を気遣っているのは見ていてなんとなくだがわかった。
加州「え……ぁ、うんっ!綺麗にしてたら可愛がってもらえるから」
「清光は元々、綺麗な可愛い子だよ。今度一緒にお買い物に行こうか!今は本丸がこんなんだからすぐには無理でもある程度綺麗になったらちょっとした小物を買いにいったりしよ?」
加州「主……ありがとう。やっぱり俺の主はすごく優しくて……好きだよ」
私の手を握って優しく笑いかけてくれる清光にドキッとした。
無理に信じなくてもいいからと言ったのに清光は私を信じてくれた。
主だと……認めてくれたんだ。
本当なら人間なんてと憎まれても仕方ないのに。
「ありがとう清光。私もあなたが好きよ……清光が認めてくれるような審神者に私はなるから」
加州「俺は主のこと認めてるよ。最初は審神者なんてって思ってたけどさ……主は暖かいから、あの人とは違うんだって信じられた。勘みたいな曖昧なものだけどさ、主のこと信じたい」
本当にどこまでもいい子なんだから。
清光が私を信じようって思ってくれたならその思いに応えられるよう私は頑張らなくちゃいけないな。
加州「大好きだよ」
「……うん、ありがとう」
大好き、か