第17章 始まる朝
大きな神社の前。
そこに私はいた。
静かで落ち着くような場所に私は和みながら一歩、二歩と歩みを進めていくと少女と誰かがいるのが見えた。
それ以上は見えない壁に阻まれているみたいに進めなくて、仕方なくじっと二人のことを見ることにした。
「君は、毎日つらくないのかい?」
「つらくないよ。ーーが遊んでくれてお話ししてくれて……知らないこと、たくさん教えてくれる。だから寂しくないしつらくない」
あぁ、あれは……私だ。
5つ、いや6つくらいの時……親の仕事の関係でどこかに一緒にいって仕事でいない時間は近くの神社に遊びにいっていた。
朝から、夕方まで……ずっと。
「私は、いつかみんなを笑顔にできることをしたい!だからねーーにも笑顔になってほしい!誰か一人のためじゃなくみんなのために……私は生きていたいってそう思うんだ」
誰か……みんなのために。
私は幼き頃から愛情を受けられなかった。
だから大きくなったらみんなが笑っていられることをしたい、受けられなかった愛情を代わりに注ぎたいとずっと思っていた。
その事は覚えてる。
けど、誰かと話して遊んでいたはずなのに姿が思い出せない。
「だからまずはーーを笑顔にしたい!寂しいなら私がいるよ。私が寂しくならないようそばにいてあげる!ぁ、でも……お母さんとお父さんとお家帰らなきゃ……でもでもここ遠いから私一人じゃ来れない……」
初めて、幸せにしてあげたいと思えた人。
母でも父でもなく神社に一人でいたあの人を私は……
「それじゃあ、君が大人になったとき……また会えたなら……今度は私とずっと一緒にいてくれるかい?」
「……うん!大人になったらずっと一緒にいる!約束ね」
あの頃の私はとにかく嬉しかったのだ。
初めて私を見てくれた、一緒にいたいと思ってもらえたことが嬉しくて指切りげんまんをして別れた。
それから私はその人に会いに行っていない。
子供の頃だったこともあって自分がどこに行ってたのかなんて時が経てば忘れてしまって……あの人は、待ってくれているのだろうか。