第16章 推測
「ほら、薬研くんはお部屋に戻りゃんせ。私とずっと一緒にいても退屈でしょう……万が一にも私の色気に惑わされても困りますから」
薬研「大将に色気ってあったか……?」
「よし、私の目元をじっとみようか。目を開くよ」
薬研「冗談とは言わないが、まあ帰るとするか」
「色気あるって言ってよ……じゃあ、私は……あとでこっそり部屋に戻るよ。あ、送ろうなんて考えなくて大丈夫だからね。これくらい一人で何とかしなきゃ今後困るから」
薬研「……わかった。それじゃあな大将……」
目を閉じているので姿は見えないが襖が閉まる音を聞いて目を開けると、誰もいなくなっていた。
……帰りなさいとは言ったけど置いていかれるとちょっと寂しい……
「……ひとりぼっち、か」
膝を抱えて座り直すと暗闇で部屋に一人でいると孤独感が半端なくて悲しくなってきてしまう。
一人には慣れたのに……まだまだだな。
「泣きそう……」
薬研「泣くくらいなら一緒に部屋に戻るぞ」
「っ……や、薬研きゅん!」
あ、噛んだ。
薬研「置いていくわけないだろう……三秒以内に出てこないと……」
「で、出る今出るから!」
襖の前に立つと深呼吸をして目を閉じてからそっと開ける。
すると目元に感じた手の温もり、ではない。