第16章 推測
薬研「全員行った、な。さてと……大将、適当な部屋に行くぞ」
「主を大事にすることはできませんか」
薬研「誰よりも大事にしてるぜ。それなりに、な」
「……あら、そう」
腕を引かれて近くの部屋にいれられるとすぐに座らされた。
なんなのだ一体……。
薬研「大将……どこでも、発情するのはよくないと思うぞ」
「おいこら、誰が発情してる雌豚だ」
薬研「そこまでは言ってない。この赤い瞳にほんのりと香る甘い匂い……俺たちを惑わせるには十分なくらいだ」
「赤い、瞳……また、か。ごめん……なんか身体が熱いしふらふらするなって自覚症状はあったけど……目とか匂いは私にはわからないから」
だからあのとき、目を……。
叩かれたのは痛かったけど、みんなのためを思ってやってくれたってことなら納得だ。
私は目を閉じて、薬研くんのことを見ないようにした。
「薬研くんは……大丈夫なの?君が私に欲情したのは記憶に新しいんだけど」
薬研「そうだな……主に欲情、させられた時はきつかったが今は耐えられる」
「……ごめんね。困らせるようなことして……」
薬研「匂いは嗅がなければ大丈夫だし目も合わさない限りは……いや、まあ……大丈夫だろう」
いつから瞳が赤くなっているのか知らないが、小狐丸さんや三日月さんを部屋に送り届けてる最中か、後くらいにこういうことになったのだろう。
薬研くんがいうには彼らを惑わせる瞳と匂いをしているそうなので……あのとき二人はお酒を飲んで酔っていたから、大丈夫だった……とかだろうか。
体質かなにか知らないけど何とかしないと……。
薬研「そういや、大将も大丈夫そうだな?あのときは俺っちがほしくてたまらないって顔してたのにな」
「間違ってないかもだけど、もうちょっとオブラート……優しく包んでいってほしいかな」
目を閉じていると、薬研くんの声がよく聞こえる。
姿を見ずに声だけ聞いていれば成人男性と言ってもいいくらいの、いい声をしている……。
これは、違う意味でドキドキするかもしれない。