第10章 反省
『はいはーい』
「無事、引っ越しが終わりました。こんなにいいところをご用意してもらいありがとうございました……では」
『いやいやいや、何で切ろうとするんよ』
早く切りたかったのに……。
この人は一度話すと長くて……正直めんどくさい。
数分程度ならこちらも受け答えしているが数十分くらいになってくると、適当に返事はするがこの人の喋り声をBGMにすることがほとんどだ。
一緒に生活していたときは、ちゃんと仕事していたようで部屋にはいなかったから電話が唯一の暇潰しだった気もする。
『こっちももぬけの殻になった本丸の確認は済んだよー……いやぁ、ずいぶんときったねぇなぁ』
「……もしかして、今……」
『お察しの通り、あの本丸の前にいるよん。ほらかくれんぼしている刀剣とかいたら困るからねーでも……一振りもいないのは確認済。刀でも人間でもない……何かの存在はひとつあるけどな』
いつもの口調が定まらないしゃべり方は、私の知っているあの人のものであるのはわかったが、少し……真剣な声のトーンに私は驚いた。
電話を掛けるタイミングを間違えただろうか。