第9章 お風呂でバッタリ
「ご、ごめんなさい!」
謝ることだった。
そうすると燭台切さんの手の動きが止まったのがわかった。
成功、かな。
「あ、あの……ちょっと場を和ませようと思ってジョークを……ご、ごめんなさい慣れないことをすべきではありませんでした」
燭台切「主……まったく、悪い子だ」
コツン、と額同士が合わさる。
怒っているだろうかと恐る恐る表情を盗み見るが、怒っているというわけではなさそうだった。
燭台切「冗談っていうのはわかっていたけど、そんな悪いことをいう君にはちょっとおしおきが必要かなって思ってね」
「わ、わかってたんだ……」
警戒心。
私にはそういうものが欠けているみたいなことを言われたのは記憶に新しいが、殺されるだけではなくこういうことの警戒まで怠っていたなんて……恥ずかしいな。
今度は流されない、とか決意したのにまた流されつつあったし……
燭台切「ごめんね……怖かった?」
「こ、怖くはなかったです……けど、すごくドキドキして今も苦しい……」
燭台切「今度からは冗談でもあんなこと、言っちゃダメだからね。じゃあ僕は夕飯の手伝いをしてくるから……またあとでね?」
「う、うん。燭台切さん……ありがとう」
ニコッと笑って脱衣所から出ていく燭台切さんを見送ると私はその場に座り込んだ。
どうしよう……また、鼓動が早くなって苦しい。
苦しくてつらい、のに…とても甘くて変な感じだ。