第8章 お引っ越しをはじめよう
暖かくてぽかぽか……いや、ふかふか……。
わたあめみたいな真っ白な雲の上にいるような夢だ。
苦くもない、そんな場所にいる私は気持ちを落ち着かせて夢を楽しんだ。
夢だと気づいたら目が覚めるとはいうが、夢だとわかっているからこそ目覚めたくないというのもある。
つまりは……半分起きているが起きたくない、そんな状態だ。
それでも早く起きないといけないという思いから夢の世界は崩れ現実へと戻さ、れ……
燭台切「あ、おはよう主」
「……う、わぁ……」
目が覚めて最初に見たものは美しいものでした。
燭台切「よく眠れた?」
「寝た気もするけど……疲れは健在かな……あれ、ここ……どこ」
とんでもないものを見た時のように心臓がバクバクと高鳴っていてなんとも苦しいが身を起こしてみると、自分が知っている場所とは違うことに驚いた。
綺麗な畳に、綺麗な襖……そして机やタンスと一つの部屋に私はいた。
燭台切「新しい引っ越し先だよ」
「……え。えぅッ…ぅあ?」
燭台切「それは動揺している反応かな?」
新しい引っ越し先って……さっきまで大広間にいて、燭台切さんと話してたら気が遠くなって……
「あ、挨拶……制覇の人は?」
燭台切「制覇……?あぁ、彼女なら役目を終えたから帰りますって帰ったよ。君が寝ていたからね起こすのが可哀想だからって」
「……なんか申し訳ない。寝ている間に引っ越しが終わるとか……え、ひどい。私ひどい」
普通、みんながちゃんと転送できたのか見守ってから最後に本丸に頭を下げてさよならするものなのに……カッコ悪い。
新しい場所で心機一転する第一歩を転げてしまった気分だ。