第5章 短刀
「それじゃ、いこうか……あ、あの長谷部、そんなに見つめられるとさすがに照れてしまうというか」
じーっとこちらを見つめる長谷部に私は困ったように笑う。
顔がいいから見つめられるとさすがの私もドキドキしてしまう。
さすがは美形。
長谷部「あ、すいません……主の、それが気になって」
「それって……襟巻き?こ、これはね寒くて……わ、私って体温低いから寒がりなの」
長谷部「なるほど。これから夏だというのに夜などは冷えますからね……」
これから夏ってことは……今のここって、春だったんだ……。
季節感が感じられないから季節はないかと思っていたがどうやら違ったようなので安心した。
春夏秋冬を感じられないのは寂しいからね。
そして部屋から出るとまず目についたのは……足元だった。
底抜けなどで歩くのにも怪我の覚悟があった場所が……
「す、すごい……綺麗になってる……」
その場にしゃがむと板に触れてみる。
私が知っているのは底抜けするほどひどい有り様の廊下だったので驚きだ。
修繕工事でもしたかのように綺麗だ。
でも……。
「あっちは板というか……底抜けがひどいね」
長谷部「……外の方を歩きましょうか。主、綺麗に見えても所詮は見せかけなのでお気をつけください」
いつだって危険はあるものなのね……私のためにしてくれた、なんてことはないか。
私が怪我しても誰も困らないものね……。