第1章 始
「ふぅ……よしっ!」
意を決して襖を空けて部屋を出る。
「あ、あの、こんにちは?」
?「だ、誰っ!」
部屋を出たはいいが、彼は私を見るなり刀を構えた。
今にも壊れてしまいそうなくらいボロボロな身体で。
部屋から出ることで問答無用で斬りかかられる恐れもあったから構えられる程度で少し安心はしたものの、油断はできない。
私は深呼吸を一度してから姿勢を正す。
「初めまして。私は幸村なつみ。新しい審神者と言えばわかりますか」
?「新しい……っ!また、きたの……またっ、俺達を傷つけるために!」
また……?
彼の発言にまるで今まで審神者が来たような言い方をしているが私は酷いことをしていた前任の話しか聞いていない。
いったいどういうことなのかと、気になりはしたものの今は忘れることにした。
それにしてもすごい殺気。
皮膚にピリピリと感じられるほどの殺してやるという殺気。
審神者というだけで前任とは別人の私にここまでの感情を見せる彼を見ていたら悲しくなった。審神者は自分を傷つける存在なのだと考えてしまうほどのことを前任にされたのだろう。
それなのにすぐに殺そうとはせず会話をしてくれる辺り彼は優しいのだろうな。