第10章 秘密とボク
「ヒカリさん、今なにか聞こえませんでした?」
前を歩く蛍ちゃんが急に立ち止まり
そんな事を言い出した。
繋いだ手に
力がこもる。
「蛍ちゃん、変なこと……言わないでよ……?」
もう少し、あと少しで
みんなの所に
鉄朗の元に辿り着くのに!!
「ちょっと、回り道しましょう……」
振り返って話す蛍ちゃんの顔は
真剣そのもので
私の中には恐怖しかなかった。
「うん……」
元来た道を引き返し
蛍ちゃんの後を付いていく。
一つ下の階に降りると、
人の気配は全くなかった。
遠くの方で
どこかのメンバーが
はしゃいでる声も聞こえるけど
ここはなんだか別世界にいるような感覚。
「こっち、行きましょう。大丈夫な気がする……」
蛍ちゃんは真っ暗な廊下を進む。
繋いだ手には
じっとりと汗が滲む。
「ごめんね……?」
「……僕が、付いてます」
繋いだ手に
再び力が込められた。