第7章 地獄行きの切符なら
「……はぁ?」
食堂では、史佳と莉香が並んで座っていた。
それを囲むように、テニス部レギュラーが座っている。
食事がてら今後のことを話し合おうという名目で集められたのだ。
もちろん、彼らの周りには普通に食事を取っている生徒も多くいた。
彼らは皆一様に耳を澄まし、彼らのやり取りを聞いていた。
「だから、言いにくいんだけど、莉香ちゃん、一時的にマネージャーをやめてくれないかな…? 二ヶ月くらい、私がちゃんと仕事を教えるから」
「なんで? 部活をしながら教えてくれればいいじゃん」
「えっと…ね、その、莉香ちゃん失敗が多いでしょう? それを全部教えてたら、何て言うか、他の仕事が出来なくなっちゃうし…。
土日の朝と夜に教えるから。大丈夫、二ヶ月もすればちゃんとできるようになるよ」
あくまでも、善意からの申し出だと周りに思わせるために、言葉を選びながら話す。
久しぶりにちやほやされて上昇していた莉香の機嫌がみるみる下降していくのが手に取るように分かった。
よし、この調子。どんどん機嫌を悪くしてくれて構わないよ。
「……二ヶ月もみんなと離れるの、寂しいなぁ」
今更猫を被ったところでどうにもなりはしないのに、しつこくいい子の皮を被り続ける莉香に、史佳は若干呆れつつも、表情にそれを出さないよう努めながら言葉を続けた。
「ごめんね、でも、それぐらい必要だと思うんだ。そろそろ大会も近いし」
「でもぉ…」
ごね続ける莉香に、史佳は周りにはとうとう我慢しきれなくなったように見えるよう、少し声のトーンを落とした。
大丈夫、この流れで私が少し言葉を厳しくしても何らおかしいことはない。
「あのね、莉香ちゃん。この際はっきり言うけど、今の貴女じゃテニス部の足手まといでしかないの。だから、少しの間我慢して…」
史佳はそこまでしか言うことが出来なかった。