第7章 地獄行きの切符なら
史佳は一応はテニス部のマネージャーとして籍を置き続けている莉香を、毎日観察し続けた。
笑顔のメッキがはがれ、凄まじい嫉妬に溢れた視線を感じることも多くなった。
「そろそろ、かな?」
「ああ」
もう学園内に、莉香を心底愛している者など存在しない。
交流の多いテニス部レギュラー、クラスメイトが『ちょっとどうかなとは思うけどやっぱり好きだ』という酷く弱い恋情を抱いているだけになった。
あとは、そいつらの目も覚まさせて、夏川莉香の味方を一切取り上げてしまえばいい。
そうすれば、自分から学園を立ち去りたいと榊に進言をするだろう。
計画実行から実に一ヶ月。長く長く時間をかけて、莉香の人気を地に貶めた。
もちろんその間、史佳は莉香に仕事を教えた。
教えなかったら自分の信頼が揺らぐためだ。
あくまでも「かわいそうな史佳」でいるためにあらゆる努力をし続けた。
しかし、莉香はやはり失敗ばかりで、焦る気持ちがさらに酷い失敗を呼び寄せた。
(……落ち着け、大丈夫。きっと、うまくいく)
とうとう今日、最終段階に入る。
そのキーを握っている史佳は、人知れず深呼吸を繰り返した。
失敗は許されない。これがうまくいかなかったら、また計画を練り直さなくてはいけない。
史佳はぐっと唇を噛み締め前を見ると、最後の舞台である食堂へ足を踏み入れた。