第9章 引き篭もりがちなスイートハニー
史佳は心の底からそう思っていたが、その考えを裏切って、日吉は優しいだけではなくなった、少し陰りの出来た史佳を好ましく思っていた。
前までの「いい奴」である史佳も好きは好きだったが、恋情ではなく純粋な信頼に近かった。
けれど今のそれは違う。完全なる、恋だった。
彼女が卑下する、「悪い」史佳が好きだった。
基本的に善人なのにも関わらず、罪を犯し自分を嫌い一生そのままでいる覚悟を決めている、そんな史佳に惹かれたのだ。
「いいな、お前は今日から俺の恋人で、俺はお前の恋人だ。他の奴らに告白だのなんだのされてもそう言えよ」
「はいはい。まぁ、私に告白なんてするモノ好き、いないだろうけどね」
気付かないのは、本人だけだった。
そうして、物語は終わりを告げる。
全てを見ていた天上のものは、ああ面白かった、と笑った。