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弾けて壊れた私の話

第5章 失うものなど


「てめぇに出来ることは、ドリンクとタオルを配るのと洗濯物を洗濯機に入れてボタンを押すことと備品を運ぶことだけか? あ? 小学生にも出来るぜ!」

 苛立ちを抑えようともせずに跡部は莉香を叱り付ける。
 莉香はあまりの剣幕に泣いてしまいそうだった。

「だ、だって、史佳ちゃんがそれだけやればいいからって」
「……史佳が?」
「そ、そう! あたしが他にも何かやろうかって聞いても、何もやらなくていいとしか言ってくれなくて!」

 跡部の怒りの矛先が史佳に向かい始めたのを感じ取った莉香は、これ幸いと責任の全てを史佳に押し付けようとまくし立てる。
 実際、彼女にとって悪いのは自分に仕事を教えなかった史佳だった。

(なんであたしが怒られなきゃいけないの!)

 自分が聞こうともせず、不思議にすら思わなかったことを棚に上げて、莉香は憤っていた。

「ちっ、あいつにも聞かなきゃいけねぇな…」
「跡部部長、話がずれ始めてます。今話してるのは、そいつが無能だってことでしょう。
 史佳が教えなかったにせよ、見ていれば覚えられることです。そいつが仕事を出来ないのはそいつの責任です」

 完全に跡部の意識が史佳に向かったその瞬間、彼の意識を莉香に戻したのは準レギュラーではあるが、その実力からレギュラーに混じって練習をすることを許されている日吉だった。
 余計なことを、と莉香は思わず日吉を睨み付ける。

 なんであっちを庇うのさ!今庇うべきはあたしでしょ!?

「そうだな…おい夏川。確かに史佳がお前に教えなかったのも悪い。
 だがな、てめぇは何で一ヶ月、自分より史佳が多く仕事をしてることに気付きもしねぇでのうのうとしてやがったんだ? 説明してみろよ」
「……っ」
「てめぇ、もしかしなくても、意図的に史佳に仕事押し付けてやがったな!?」
「ち、違う! そんなことしてない! 知らなかっただけ! 本当です! 信じて!」

 莉香は跡部から視線を外し、レギュラーに振り返る。
 その大半は頷いてくれたが、日吉だけはこちらを蔑むような目で見ていた。
 慌てて跡部を見直せば、そこには同じ色の瞳が二つ。
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