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弾けて壊れた私の話

第5章 失うものなど


「跡部ー! タオルとドリンクこっちにもくれー!」
「はーい! 只今!」


 たたた、と私を呼んだ準レギュラーの子に駆け寄る。
 その子は嬉しそうにタオルとドリンクを受け取ると、たくさんかいていた汗を一気に拭った。
 それからドリンクを口にする。

「うめぇ! 準レギュラーの内にこんなうまいドリンクにありつけるとは思えなかった!」
「あはは、褒めすぎだよ」

 でも、そう思うのは当たり前かもしれない。
 作戦のためにやってきた準レギュラー・平部員のコートだけど、あまりの酷さに思わず眩暈がしたくらいだった。
 ドリンクもいつも粉の奴で、しかも平部員の担当の子のやり方を見せてもらったら分量を間違って覚えていた。
 不味いに決まってる。

 一応、私のドリンクはフルーツや野菜を絞ったものを少し混ぜたりして、栄養も味も粉のものより格段に上がってるから、みんなが美味しく感じるのは仕方ないのかもしれない。
 あの人を追い出す間だとしても、何とかしなくちゃいけない。
 これじゃあ、育つものも育たないよ。
 まったく、お兄ちゃんたら何やってたんだろ。

 私の役割は、今のところ精一杯働くことだけだから問題はない。
 「完璧に」って条件は付いてるけど、もともとやっていた仕事だし、量は増えたけど楽しいから問題ない。
 みんな頑張ってるし、サポートできるのが純粋に嬉しい。
 もっとうまくなってほしい。もっともっとサポートしたい。

 これは、あの人が来るまで思っていたことだった。
 あの人が来て、働くことが苦痛になってしまっていた。
 でも、あそこから離れることで、また働く楽しさを思い出せた。本当に良かった。
 だから、あとは頑張るだけ。


「なんか、『跡部』って跡部部長を呼び捨てしてるみたいで怖いな」
「あー、そうかもな。恐れ多いっていうか?」
「そんなことないよ? あ、でも、それなら名前で呼んでよ。レギュラーの皆にもお兄ちゃんと被るからって名前で呼んでもらってたし」
「……いいのか?」
「うん」

 じゃあ、史佳、とちょっと恥ずかしそうに私と話していた準レギュラーの二人は言った。
 うーん、やっぱり同級生の女子の名前を呼ぶのって恥ずかしいものなのかな?
 呼ばれ慣れちゃっててよく分かんないや。
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