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弾けて壊れた私の話

第4章 罪に気付いて


(このリストの中には、たぶん、最初から嫌いな人と、前は好きだったけどある日急に冷めた人の二通りしかいない)


 それまでは、他の人間と同じく訳もなく好いていただけだったが、ふと嫌悪を抱いた瞬間、冷めたのだと言っていた。
 嫌いだと、好きにならない。好きでも、嫌いになれる。

 キーワードは、「嫌い」。


「……あの人を嫌いな人は、好きにならずに済んで、好きだとしても嫌悪すればそれまでどんなに好きでも嫌いになれるってこと…?」


 辿り着いた「仮定」に、史佳は自分でも気付かずに微笑んでいた。まだ確証はないが、きっとこれが正解だ。
 これが外れだったらまた考えるまでのこと。
 大丈夫、私は馬鹿ではないはずだから。

「お兄ちゃん、解ったよ」

 晴れやかな笑顔と共に、彼女は兄に告げた。

 さあ、貶めてやりましょう。









 日吉若は自宅の布団の上で、今しがたケータイに届いたメールを読んでいた。
 内容は、言わずもがな夏川莉香を追い出すための計画表。
 恐らくテニス部内で自分にしか送られていないであろうもの。


「やっとかよ」


 そう呟く。
 部長の行動があまりにも遅いので、いっそ自分が動こうかとすら思い始めていたのだ。

 彼は、最初から夏川莉香を嫌っていた。
 本人が自覚しているのかしていないのかは知らないが、明らかにテニス部レギュラー目当てだったからだ。
 テニスに対する興味はかけらも感じられなかった。
 溢れ出る自分たちに対する媚びたオーラに、一瞬で嫌悪を覚えた。

 だから、次々陥落していく先輩や同級生たちが信じられなかった。
 惚れる要素なんて顔しかないあの女のどこがいいのかと問い詰めたかった。
 やはり顔なのだろうか。それにしても、性格が最悪すぎる。
 普段はうるさいとしか思わないフェンスの向こう側にいる女共がぽつりとこぼした「顔だけ女」という言葉に、思わず頷いてしまったくらいだ。


『なお、今回はテニス部ファンクラブに協力してもらうことにした』


 メールの最後のほうに書かれていた文章に、正しい判断だなと思う。
 人は多いにこしたことはない。
 ただでさえ学園中の男共がほぼ陥落しているのだ。
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