第1章 最後の時
12歳を迎える年、私は訓練兵となった。
私を育ててくれた皆を、今度は私が守りたい。だなんて……
幼いなりに必死に考え、選んだ道。
そこでの3年間はまさに死にもの狂い。
やってもやっても実力は中の中。
良くも悪くも目立たない私は、落ち込む事も多かった。
そんな時、支えてくれた同期達。
つまずいた時は支えてくれ、一緒に悩んでくれた。
教官の目を盗んで夜中まで話した事もある。特に皆の故郷の話は、とても面白かった。
自分の見てきた世界はほんの一部で……
知らない事は山ほどあるのだと。そう思い知らされた。
そういえば、初恋と呼べる経験をしたのもこの頃だ。私より1期上の先輩に恋をした。
「あんた面食いなの?」
なんて皆にバカにされたっけ。でも確かに先輩はカッコイイから、否定はしない。
たまにその姿を見かけては、目で追い胸を高鳴らせていた。そんな時は決まって
「おーい!サラ!?」
と同期が私の耳を引っ張り、現実に引き戻してくれた。
顔が赤いと指摘され、しょっちゅう下を向き顔を隠していたっけ。
結局、告白は出来なかった。
でもそれで良かったと思う。
最後までろくに話した事もなかったし。
想いを伝えても、困らせるだけだった。
けれど。
私にとってあれは間違いなく『初恋』で。
大切な思い出なのだ。
訓練兵として過ごした3年間で私は気づいた。
『世界は広いんだな』『色んな人が居るんだな』と。まだ漠然としていたが、自分という存在はちっぽけで。
世界は想像していた物よりずっと広いのだと……