第1章 最後の時
自身の左足をぼーっと眺める。不思議と痛みは感じない。
ただ、この瓦礫を自力で動かす事は不可能だな。と、冷静に分析している自分がいた。
先の戦闘で崩れたこの民家。
サラの位置からは、外の様子を約90度見渡す事が出来る。
少し離れた所に2人。
地面に張り付くように伏せる兵士の姿が見て取れた。
人の気配も、巨人の気配も感じない。
戦闘は終わっている様だ。
「気を失っていたのかな……」
巨人と共に、民家になだれ込んだ所から記憶が無い。
あまり正確には覚えていないが、5~6体は相手にしていた筈だ。
私と横の兵士と、遠くの2人。
それ以外の仲間が無事であることを、ただただ願う。
正確には私も無事なのだが、壁外で単騎になる事は死を意味する。身動きが取れない状態では尚更だ。
サラは死を覚悟し、天を仰いだ
一番高い位置で輝く日の光に目を細め、そして静かに目を閉じる。
良い人生だった
……両親は居ない
私は孤児として施設で育った。
壁の中じゃ別に珍しい話じゃないし、
皆で寄り添って生活するのは楽しかった。
勿論、普通の家庭を羨ましく感じたこともある。
でも
例えば『可哀そう』だとか。
自分を卑下するような感情を持つ事は一切無かった。
それは私を、無条件に愛してくれた皆のおかげだ。
幼い私は間違いなく、満たされていた