第1章 最後の時
巨人にしては、いささか小さい足音を響かせて。
一歩一歩、こちらへ向かって歩いてくる。
「……居るんなら、そう言ってよ」
そんな言葉が、自然とこぼれ落ちる。
どうせ巨人と遭遇するなら、足を切る前に会いたかった
どうせ食べられるなら、大きい巨人が良かった
どうせ死ぬなら、先の戦闘でそうなれば楽だった
どうせ、もう会えないのなら……
恥ずかしがることなんて、何もなかったんだ
巨人の手が私を掴み、フワッと身体が宙に浮いた。それも、ご丁寧に両手を使って。
大事な人形を抱える妹みたい
そんな事を、ふと思った。
「サラ!!」
巨人の口が大きく開いた時、叫ぶように呼ばれた私の名前。
そちらへ視線を向ければ、会いたかった貴方の姿。
馬を走らせ、こちらへ向かってくる。
その姿は本物か。都合の良い幻想か……
ねぇ、貴方に伝えたい事があるの
今更だけど……聞いてくれる?
巨人の歯列の裏側を視界の隅に捉えながら。
サラは真っ直ぐ、愛しい人へ手を伸ばした。
「 」
【最後の時】 END