第1章 最後の時
なぜ自分の気持ちに向き合わなかったのか。
これが恋かなんて、そんなもの分からないと。
今なら分かる。
私はいつの間にか、貴方を……
家族のように、愛していた。
伝えたい。
本当は嬉しかったって。
少し驚いただけなんだって。
大好きだよって。
……伝えたい。
サラは自身の左足を眺めた。
瓦礫に潰されたその足は、少しづつ出血している。
このまま残れば、間違いなく出血死だ。
辺りに人の居る気配は無い。
気を失っていた時間がどれ程だったのかも、定かでない。
つまり。ここから生き延びるには……
サラは自身の右手を、胸元のシャツで拭った。ぬめり気のなくなった両手を使い、右足のブーツを脱ぎ捨てる。
トリガーに刃を装着すると、右足に掛かるベルトを適度な長さで切った。それを使い左足の付け根をきつく縛る。
……やるしかない
そう、左足を切断するしかない。
サラは近くにあった木片を手に取り、ゆっくりと口へ運んだ。上顎と下顎でしっかりと噛み締めれば、苦い味がした。
ここを抜け出したとしても、馬を呼べるか分からない。
馬が見つかったとしても、壁まで辿り着けるか分からない。
確率はゼロに等しい。
けれど、諦める訳にはいかない。
だって、私はまだ生きている。
ブレードを握る手が震え、カチャカチャと音を立てる。
恐くない……恐くない!
この瓦礫の中。絶望と共に死を待つ方が、ずっと恐ろしいじゃないか。
サラはスッと息を吸うと、歯を悔い縛り。
左足に刃を突き刺した