第1章 それは責務
翌日、さらにその翌日と亀裂は大きくなり
手のひら程の長さだったものが三十センチ程にまで広がっていた
「おばあ様…このままじゃ」
焦る鈴音に菊は再び提案した
「北の様子を伺いましょう。早速文を出してちょうだい」
「かしこまりました」
鈴音は文を書くと黒闇の当主へと送る
届けたのは馬で一番の速さを誇る男だった
北の領土まで距離があったが、翌日の夕方には返事と共に戻る
「……北でも同じ事象が起きているようです」
思わず文を握り潰してしまったが、菊は咎めなかった
「やはり、黄泉で何かが起こっているのですね。これ以上被害を増やす前に、黒闇家との協力が必要でしょう」
「黒闇家と…ですか?」
「えぇ。歴史書に書いてあります。両家が協力し合うことで互いの力を増すことができるのです。祠に亀裂が入るのを防ぐことだってできるでしょう」
「ほ、本当ですか!?」
「ですが、相手が協力してくれるかどうか。またしても文を送る必要がありますね」
白霧家は使いを出すとその返事を待つ
その間に菊は黒闇家との協力方法を教えてくれた
「両家の代表である者にはその体に印が刻まれています。そこに互いが触れるだけです」
「え?それだけですか?」
鈴音はポカンとしてしまう