第6章 ★薫の秘め事(~P83)
この腕で恭子を抱いたのだ
そう思うと胸にどす黒いものが浮かぶ
「は、離して下さい!」
「離しません」
腕にぐっと力を入れられ、薫は抵抗できなくなる
薫が大人しくなったのを確認して奏月は続けた
「薫さんが私を避けているのは、この間の件が原因ですか?」
「ち、違います」
「じゃぁ何で」
あながち指摘は間違いじゃない
奏月の顔を見れば大きなモノを思い出してしまうし
今では恭子の顔がチラつき、苛立っていた
「薫さん…」
腰に手を回したまま奏月は薫を見下ろす
その目は潤んでいて色っぽい
どうしていいかわからず薫が目を反らすと
「お慕いしてます、薫さん」
優しい声と共に衝撃的な言葉が降り注ぐ
「な、何を言って…」
「一目惚れです。この村に来たとき貴女を見て心を奪われました」
奏月の瞳は真剣だった
だが信じられない
「からかうのは止めて下さい!私見たんです!昨夜、恭子がこの部屋を訪れたのを」
「恭子…?あぁ、彼女ですか。あの方ならすぐに帰しました。指一本触れてません」
「そんなの…信じられるわけ…」
恭子の男食いは有名だ
どんなに好きな人や彼女がいても恭子の色気に負けてしまうのだという
奏月がそうではない理由がどこにあるだろうか
「薫さん」
「止めて…離して下さい」