第6章 ★薫の秘め事(~P83)
廊下の掃除を終えた薫はバケツを持って別の場所へ向かおうとしていた
恭子の担当場所が終わっていない気がしたのだ
と、その時
廊下の曲がり角から現れた人にぶつかってしまう
バシャッ
バケツが揺れて水が相手にかかる
薫はバランスを崩して倒れそうになったが、相手から伸ばされた腕が腰をしっかりと支えてくれた
「大丈夫ですか?」
そんな声にドクンと心臓が跳ねる
だが直ぐに薫は我を取り戻すと目を見開く
ぶつかった相手はなんとあの黒闇家の一人、背の高い男の人だったのだ
「も、申し訳ありません」
薫は姿勢を整えてからすぐに頭を下げる
よく見たら相手のお腹辺りから足まで濡らしてしまっていた
「す、すぐに着替えを用意いたします!」
「え?いいですよ、これくらい」
「だ、ダメです!お風呂のご用意をさせていただきます!」
かけてしまったのはただの水ではない
掃除をした雑巾を洗った汚水だ
「大げさですね。では、湯を桶に入れて持ってきていただけますか?拭きますので」
「かしこまりました!」
薫は踵を返すと急いで湯を沸かしに向かう
客人相手に失礼な事をしてしまい薫は泣きそうだった
せっかく両家の交流図るために来ているというのに、悪印象を持たれてしまっては最悪だ