第6章 ★薫の秘め事(~P83)
薫side
鈴音は今朝早く白霧家を出立し、黒闇家の領地へと向かって行った
白霧薫は幸せそうな表情をした鈴音を見送り、それと同時に胸が痛んだ
もう、私の居場所はないのね…
先代から桜楼巫女のお付きをしており、薫は三ヶ月前から鈴音のお付きとなっていた
しかし、お役ごめんと言うようにお付きの仕事は無くなった
鈴音を見てればそれは良いことだとわかる
たった数日で更に美しくなった鈴音は相手の八千代に相当愛されているのだろうと想像がつく
でも、心にぽっかり穴が空いてしまったような…そんな気持ちだ
薫は本家に近い血筋の者であり、三才の頃から本家で家事を行っていた
働き始めてもう十五年になる
お付きに選ばれてからも薫は家事を行っていたため、今はその仕事しかない
とはいえ、広い本家を任されているのは薫だけではない
他にも何人もの使用人がいた
「ふぅ…」
薫は廊下の雑巾がけを行っていた
長い廊下の掃除は一苦労だ
薫の長い髪は綺麗にまとめられ、動いても乱れる事はない
そんな時、足音がして薫は顔を上げる
姿を現したのは同い年の使用人、恭子だった
「あっ、いたいた薫」
恭子の髪は顎のラインで綺麗に揃えられており、普段から化粧をしっかりしているため顔は派手だった