第1章 それは責務
本土では戦が相次ぎ、多くの死者が出ているという
ひと月に何万もの人が命を絶たれているというのだ
「戦を望まない者が戦で命を落とし、この世に未練を持つ。そして黄泉から這い上がろうとするというのは基本だと話をしましたね」
「はい」
「祠には注意しなさい。黄泉の力が増大し、結界が破られる事のないように」
「かしこまりました」
今思えば、今日はやけに疲労感がのしかかった
まさか結界を張るのに力を使いすぎたのだろうか
「まぁ、うちは大丈夫でしょう。鈴音は歴代の中で一、二を争う程の魔力の持ち主。問題は黒闇家」
「島の北側にある祠を護っている黒闇家ですね」
「えぇ。あちらとは年に一度、文を交わすか交わさないか。情報は全く無い。ですが、最後の情報だとあちらの当主もなかなかの年だったはず」
そうなると結界が弱まって北の祠が破られるのではないか、と心配しているようだ
確かに…
鈴音はごくりと唾を飲む
もし自分達が南の祠を護り続けても北の祠が破られればこの世は終わりだ
「まぁいい。何か変化があればすぐに知らせること。いいね?」
「はい、おばあ様」