第1章 それは責務
宴が進み、挨拶回りが終わると鈴音は自室に戻ろうと廊下を進んでいた
そんな時
「鈴音様。先代がお呼びです」
薫から伝言を受け、鈴音は仕方なく先代の元へ向かった
「菊様。失礼します」
「入りなさい」
しわがれた声に促され、襖を開ける
そこには先代の桜楼巫女、菊しかいなかった
菊は鈴音の祖母であり、つい三ヶ月前まで祠を護る任に就いていた
本来、菊の跡を継ぐのは鈴音の母親の予定だったが、鈴音が幼い頃に病気で亡くなっている
「お呼びでしょうか、菊様」
正座をし、深々と頭を下げれば菊は小さく笑った
「そんなにかしこまらなくていいわ。今日は鈴音の誕生日でしょう。おめでとう」
「ありがとうございます、おばあ様」
親しみを込めておばあ様と呼べば、今度は満足そうに笑う
だが、すぐにそれは険しい表情へと変わった
「…鈴音。どうかしら、桜楼巫女の任は」
「現時点では問題なくやれております」
「…そう」
安心させようと思って即答したが、菊の表情は硬いままだ
「おばあ様?何かあったのですか?」
「あぁ…ちょっと気になってね。本土での戦が激化しているらしいのよ」
「そう、なんですか」