第5章 官能的な仕事
八千代と共に向かったのは親族が集まる時に使用する大広間だった
菊に促され中に入るとそこには多くの親族がいた
鈴音は先ほどお披露目だと聞いたばかりだが、菊は既に声をかけていたそうだ
「こちらに居られるのは黒闇家が当主、黒闇八千代さんです。この度、鈴音と婚約致しましたことをご報告させていただきます」
菊の言葉に続いて鈴音と八千代は頭を下げる
…いきなりこんなこと言われても困るよね
鈴音は皆の反応が怖かった
桜楼巫女になったばかりで婚約なんて
仕事を舐めてると思われないだろうか
ドキドキしていると拍手が聞こえた
驚いて顔を上げると、皆が笑顔でこちらを見ていたのだ
拍手が更に増したところで誰かが叫ぶ
「やっと結ばれたんだな!おめでとう!」
「…え?」
意味がわからず鈴音は目を見開く
すると八千代がこっそり教えてくれた
「俺たち、少し前から付き合ってるって話になってるらしい」
「な、何でですか!?」
「さぁ?先代たちの根回しだろ」
先代たち…
そうだ
菊だけが辛い思いをしたわけじゃない
黒闇家の先代も同じ思いをしたのだ
「喜べよ。俺たち、信じられない早さで認められてるんだぜ」
「そうですね。嬉しいです」