第5章 官能的な仕事
聞き間違い、ではないだろうか
しかし、こんな静かな場所で八千代の言葉を聞き逃すわけはない
だとしたら…
「八千代さん、今…」
「…おいおい。聞いて無かったのか」
「も、もう一度言ってください!」
「鈴音に嫁になって欲しいって言ったんだ」
ぶわっ、と涙が溢れる
祠は亀裂が入り、事態は最悪なはずなのに
今までに感じたことのない幸せが鈴音の中を駆け巡った
「返事は?」
「こ、こんな…私でよければ。末永く…よろしくお願いします」
泣きながらだとうまく喋れない
しかし、八千代は嬉しそうに笑った
「じゃ、お披露目行くぞ」
「へ?」
袖で目元を拭われると涙が少しずつ落ち着く
「そういえば何のお披露目ですか?」
「決まってるだろ。俺とお前の婚約についてだ」
「え…えぇぇ!?」