第14章 龍の巫女
舞が続く
鈴音の舞台は時間にして十分
一人で踊り続けるには長い気がしたが、気がつけばあっという間に時間が過ぎていた
床に膝を付き、頭を垂れる
あとは龍に扮した帳が現れるのを待つ
予定では直ぐ現れるはずだったが、帳が姿を見せる気配はない
一体どうしたのだろう…
顔を上げる分けにもいかず、鈴音が不安にかられていると
突如観客がざわめきだす
「見事な舞であった。巫女よ」
えっ!?
驚いた鈴音は弾かれたように顔を上げる
横を見れば、舞台袖から現れたのは帳よりも体格の良い男だった
顔は龍の仮面を付けており、口元しか見えない
だがすぐにわかった
それが誰かを理解したのは鈴音だけではない
その場にいた者全員だ
「八千…」
その名を呼ぼうとしたが、唇に人差し指をあてられてしまう
何故八千代さんが…?
混乱する鈴音に八千代は続けた
「これ程美しい巫女の舞を見るのは楽しみだが、年に一度とは淋しいことを言う」
「えっ…」
八千代はニヤリと笑った
「巫女の暮らすこの村を荒らすのはもったいない。巫女よ、我が妻となりその命尽きるまで私の為に舞うと誓うのだ」
鈴音は八千代の視線に射ぬかれる