第14章 龍の巫女
そして迎えた豊穣祭当日
朝から村は多くの人で賑わっていた
いくつもの店が並び、常にお囃子が響き渡る
皆が楽しそうで笑顔が溢れていた
そんな中、鈴音だけは緊張していた
舞台では用意されていた演目が行われている
巫女の舞はその一番最後だ
つまり鈴音は祭りが終わるまで安心できない状態にあった
八千代は忙しそうで朝から姿を見ていない
桜と帳も他に仕事があるらしくバタバタとしていた
そんな皆のため、鈴音も何か手伝うと申し出たが 当然のように断られてしまった
となれば鈴音は一人でポツンとしているしかない
一人で祭りを見て回るのも良かったが、面倒な事が起きたら嫌だなんて考えていたら
結局一人のまま夕方を迎えていた
今日は天気が良く、そろそろ秋を思わせる紅の空が美しい
しかし、刻一刻と時間が迫るなか鈴音は緊張が膨れ上がっていた
自分からやると言っておいて弱気なところは誰にも見せられない
八千代にだって緊張してるなどとは当然言えない
「鈴音様、そろそろご準備を」
桜に促されて舞台へ向かう
舞は何度も経験しているが黒闇家当主の妻という肩書きが付くだけで受ける重圧はすごかった