第14章 龍の巫女
衣装だけでなく、髪飾りや扇子も重い
一通り踊るだけで汗が浮かんだ
「鈴音様。表情が固いです」
そんな指摘を受けながら鈴音は稽古に励む
稽古の日数は少ない
ここで音を上げることはできなかった
「いいですね。では、最後に帳くんと動きを合わせましょう」
小太鼓を叩いてくれていた帳
帳は龍の役だ
「龍に台詞はありません。巫女が舞を披露した後やってきて、巫女を抱き寄せて口付けを交わし、そのまま舞台袖に消えていくだけです」
「く、口付け!?」
鈴音が驚いた声を出すと桜はクスクスと笑う
「当然フリです。もし本当にするような事があれば帳くんの命は私が奪いますから。そう…八千代様より早く、ね」
「…さ、桜?」
桜の発言に帳はぶるりと身を震わせていた
と同時に八千代が龍の役を代われと言っていたのを思い出す
もし八千代が龍の役だったらフリだけでは済まないだろう
「では、稽古を再開します」
桜の指示で再び稽古が始まった
舞を終え、龍を迎え入れる
そして口付けと同時に龍を完全に鎮めるのだ
無事に秋に収穫できますように、と祈りをこめてーー