第14章 龍の巫女
「鈴音の良さは俺だけがわかっていればいい。わざわざ他の者に見せつける必要はない」
八千代がきっぱり言い、鈴音は耳まで真っ赤にした
恥ずかしくて今すぐ逃げ出したい
八千代は真面目に語っているのだ
非常に恥ずかしい
「まぁまぁ、八千代様。当主の妻に欲情する度胸がある男なんてこの村にはおりません。命がいくつあっても足りませんからね」
帳がそう言うと、今度は怒りの矛先が帳へ移る
「なら今年も貴様と桜でやればいいだろ。昨年の祭り後、桜に色目を使う男が多数現れて影で泣いていたのはどこのどいつだ?」
「なっ…泣いてなどおりません!」
今度は帳が顔を赤らめる
隣では、そうだったの?と桜が満足そうに笑っていた
「桜ちゃん、帳くんも出たの?」
「はい。舞を披露した後、鎮まる龍の役で」
基本的に二人で行う舞台
龍が舞姫の躍りに見とれ、惚れてしまうという設定付らしい
それからもたくさんの意見が飛び交うが、話がまとまる事はなくお開きとなった
廊下を歩く八千代を追いかける
その背中は不満でいっぱいだった
「八千代さん、待ってください」
八千代の隣に並ぶとその横顔を見上げる