第13章 熱中症注意
結局、鈴音の反対により、八千代の我慢するという計画は消え去っていた
とはいえ、代替案は出ていない
暑さでぐったりする鈴音を無理やり抱くつもりは八千代には当然ない
そんなある日…
「鈴音様は本当に暑さが苦手なのですね」
貴重な冷たいお茶を鈴音に差し出しながら桜は驚いたような声を出す
桜も暑いことにかわりはないが、問題なく過ごせている、といった様子だ
「ありがとう…」
鈴音はお茶を受け取ると、そのまま飲み干す
体が生き返るようだった
「八千代様もお茶、どうぞ。ぬるめにしてあります」
「あぁ」
書類と向き合っていた八千代もお茶を受け取る
その顔に覇気がない
なんとなく、なんとなくだが、桜はその理由を察していた
そこである提案をしてみる
「ここから少し離れた場所に、柏木家が管理する神殿があります」
「…神殿?あぁ、そういえばあったな」
いきなりなんだ、と八千代の目が訴える
「もともとは本家所有の神殿。柏木家は月に一度、掃除をしているにすぎません。聞いたところによると、そこは夏でも涼しいとのことですが」
「…そうなのか?」
「はい」
桜が頷くと、今度は八千代の目が輝いた