第12章 ★桜の秘め事(~P182)
「えっと…戻る?」
とりあえず提案してみるが帳が頷く事はなかった
代わりに懐から小さな包みを取り出す
「これやる」
「えっ?」
受け取って包みを開けば現れたのは桃色のかんざしだった
「か、可愛い!いいの?」
「桜のために選んだからな。今日、誕生日だろ」
「あっ…」
言われて桜は思い出す
今日が誕生日だったことに
それはつまり帳の誕生日でもあるのだ
「ど、どうしよう…私、何も用意してなくて」
「いいよ。その代わり…」
頬に手が添えられると上を向かされる
それと同時に唇が重なっていた
角度を変えて何度もせめられ、桜は苦しくなって帳の裾を掴む
しかし、帳が解放してくれることはなく、侵入してきた舌が口内を犯した
「ちょ…くん…」
なんとか隙間から酸素を取り入れるが、頭がくらくらとしてくる
立っていられなくなった桜は帳の腕によって支えられていた
やっと離れた帳の唇が桜の耳へと移動する
そして…
「桜が欲しい」
呟かれた一言に桜は全身が一気に熱くなるのを感じた
「ちょ、帳くん!?」
「ダメ?恋人になった俺とのこと、想像してくれてたんじゃないの?」
「うっ…」
桜は言葉につまる
それを了承と取ったのか、桜の耳にキスが降り注ぐ