第12章 ★桜の秘め事(~P182)
「…よく、聞こえなかった。もっかい言って」
耳元でささやかれ、くすぐったくなる
「私、帳くんが好き。まだ…間に合うなら、帳くんの恋人になりたい」
「…本当に?」
顔を離し見つめあう
恥ずかしくて俯きたくなるのをこらえ、桜は頷いた
「俺…嫌われてるのかと思った」
「ち、違うの。確かに帳くんのこと避けてたんだけど…。好きって言ってもらえて嬉しかったの。でも、恋人になった先の事を考えて恥ずかしくなっちゃって…そしたら帳くんのこと、まともに見れなくなっちゃって」
ごめん、ともう一度謝る
だが帳の見せる笑顔は桜のよく知る大好きなそれだった
「桜…」
ゆっくり顔が近づき、唇が触れそうになった瞬間
ドサッと物音がした
弾かれたように音がした方を向けば、そこには倒れた鈴音と頭を抱えた八千代の姿があった
「鈴音様、八千代様!?」
慌てて帳から離れようとするが帳の腕は桜の腰にしっかりと回されており、逃げようがない
「ったく。覗きもまともにできないのか?」
「なっ…八千代さんが変なとこ触るからじゃないですか」
イチャつき始めた二人に桜はどうしていいかわからなかった
「とにかく、邪魔したな。午後は二人に自由時間をやる。好きにしな」
八千代は鈴音を横抱きにすると足早に去っていった