第12章 ★桜の秘め事(~P182)
…もしかして、鈴音様が帳くんと話す機会を作ってくれたのかしら
桜はぐっと奥歯を噛み締める
だとしたら…
「いらっしゃらないな。じゃ、俺は行くから」
机に盆を置き、すぐに背中を見せる帳
反射的に桜は手を伸ばし、裾を掴んでいた
「……なに?」
立ち止まった帳が振り返る
その声に萎縮してしまいそうになるが
「こ、この間の話なんだけど…」
喉が乾いて張り付いたような感覚になり、上手く喋れない
それでも桜は続けた
「あの…ごめん…」
「あぁ、いいよ。桜の態度見てればわかったから。もう忘れて」
「そ、そうじゃなくて!」
思わず声を荒げてしまう
さすがの帳も驚いたようで目を見開いていた
「あっ、ごめん。えっと…だからね…」
心臓がうるさくなる
たった二文字を伝えることがこんなに緊張するとは思わなかった
だが、今言えなければ二度と言えない気がした
「帳くん…のこと、好き…です」
やっと出た言葉はたどたどしい
ちゃんと伝わったか不安になるほどだ
「………」
「帳くん?」
やっぱり聞こえてなかったのだろうか
桜がもう一度思いを口にしようとした時
腕を引かれ、気がつけば帳に抱き締められていた