第12章 ★桜の秘め事(~P182)
それからというもの、今度は帳が桜を避けるようになっていた
そこで初めて桜は大きな後悔をする
帳を拒んでいたわけではないが、その先の発展を恐れていた
そのため、大切な人が離れようとしていることに気づかずに…
「帳くん、あの…」
「悪い。八千代様に呼ばれているから」
立ち去る帳を何度見送っただろう
その度に思い出す
桜も同じように帳から逃げ、帳に同じような思いをさせてしまっていたのだ
自分の過ちに気づいた時にはもう遅かった
今までで一番近かったはずの幼なじみは、誰よりも遠くなっていた
「桜…、帳とケンカしてるなら仲直りした方がいいよ」
紅葉はそう何度も言ってくれたが、帳が桜を避け続けている限りまともに話もできない
とりあえず頑張るとだけ紅葉には伝えたが一体どうしたらいいのかは思い付かなかった
そんなある日
「桜ちゃん?」
声をかけられ顔を上げる
たった今、鈴音たちの食事を配膳しているところだ
目の前の鈴音が心配そうに桜を見つめる
「最近、元気ないけど。何かあったの?」
「そ、そんな…」
その優しさに甘えてしまいそうになり、桜は俯く
そんな桜の手に鈴音の手が重ねられた
「何かあったのよね」