第12章 ★桜の秘め事(~P182)
それから、桜は帳とはぎこちない状態が続いていた
主に桜が緊張してしまい上手く話せないでいたのだが…
「桜、あのさ…」
「あっ…中庭の掃除がまだだった!」
逃げる口実を作って立ち去っては後悔する
それの繰り返しだった
その行動がどんなに帳を苦しめているかも気づかずにーー
告白から四日後、桜は帳が買い物へ行くと聞き、調味料の買い出しをついでにお願いしようと思い立つ
今まさに出掛けようとしている帳を見つけ
「ちょ…帳くん」
緊張ながらもその背に声をかける
いつもなら優しい笑顔を見せてくれる帳
何故か当たり前のようにそんな帳を想像していた桜は固まった
「なに?」
振り向いた帳に笑顔はなく
聞いたことないような低い声を出し、冷たい目で桜を見下ろしたのだ
無意識にビクっと体を震わせてしまう
…こんな帳くん、知らない…
「桜?」
「あっ、えっと…買い物行くって聞いて…醤油が足りなかったから…」
「わかった」
帳はすぐに踵を返して門をくぐる
その背はすぐに見えなくなっていた
「帳…くん?」
桜はしばらく動けずに立ち尽くしていた