第12章 ★桜の秘め事(~P182)
翌朝
「はぁ…」
眠気と戦いながら朝食の準備にとりかかる
帳くんとどんな顔して会えばいいんだろう…
桜の頭の中は帳でいっぱいだった
こんなに帳のことばかり考えたことはない
いつもならもうすぐ帳が手伝いに来てくれる時間だ
桜がそわそわしていると案の定帳が現れる
「はよ」
「お、は…よう」
いつも通りの帳に対し、桜はまともに挨拶すらできない
それだけで恥ずかしさが込み上げた
「何する?」
「あっ、じゃぁ…鍋、焦げ付かないように見て欲しい」
帳に背を向け、桜はおひたしの準備をする
どうしていいかわからなかった
告白なんて今まで一度もされたことがない
好きな人に告白されたらどうすればいいか、まず最初にそれを紅葉たちに教わるべきだった
会話なく、そのまま調理が終わる
ここまで静かなのも初めてだった
「あの…ありがと…」
「桜、昨日のことだけど…」
「ごめん、他に用があるから行くね!」
帳が何か言いかけたが、桜は逃げるようにしてその場を立ち去っていた
と同時にすぐに後悔する
「私ってば…なにやってるのよ」
誰もいない廊下で頭を抱える
だが、どうしていいかわからなかったのも事実だ
こんなこと紅葉たちには言えない
桜は一人、頭を抱えたままだった