第12章 ★桜の秘め事(~P182)
それから三日後
桜はやっと男女の関係について理解していた
愛する者同士が結ばれる
それはとても素敵な事だと思っていた
今日も桜は空き部屋を掃除していると、不意に人の気配を感じて振り向く
そこには同じく本家の使用人、瀬津という男が立っていた
桜より七つも年上であまり話した事はない
「瀬津さん、どうかしました?」
声をかければ、瀬津は後ろ手で襖を閉める
部屋には二人きり、の状態だ
「桜…」
瀬津の桜を見る目は異質だった
桜は本能的に身震いさせると、一歩後ずさる
しかし不意に伸びてきた瀬津の腕に引っ張られ
気がつけば押し倒されていた
「いった…瀬津さん、何を…」
「桜、可愛いな」
「えっ…?」
驚きで目を見開く
これから何をされるのか想像してしまった
「や…やだ!!やめて!!」
必死に抵抗するが、腕を押さえつけられビクともしない
瀬津の顔が迫り涙を浮かべた瞬間
「桜から離れろ!!」
バキッと鈍い音がして桜は解放される
すぐ横で瀬津が白目をむいて倒れていた
「大丈夫か、桜!」
助けてくれたのは帳だった
ほっとした瞬間、涙が溢れてくる
「桜、立てるか?瀬津がいつ起きるかわからない。移動するぞ」
帳に促され、空き部屋を後にする