第12章 ★桜の秘め事(~P182)
「盆を持て。すぐにここを離れるぞ」
帳に耳元でささやかれ、桜は驚いた
部屋の中に苦しそうにしている鈴音様がいるのに!?と思ったからだ
しかし、聞こえてきた声に桜は思考停止する
「八千代…さん…あっ、もぅ…」
「あぁ。好きなだけイケ。乱れるお前も可愛い」
固まってしまった桜は引きずるようにして帳に連れ出され
気がつけば勝手場に戻ってきていた
「おい、平気か?」
帳に肩を揺すられ、桜はやっと我に返る
「あっ、帳くん。ごめん…」
小さく頭を振ると状況を理解しようとした
…さっきの八千代様と鈴音様…まさか、昨日紅葉さんたちが言っていたあの…
ぼっ、と顔を赤らめると
帳は面白くなさそうに桜を見下ろした
「ったく。誰だよお前に入れ知恵したのは」
「えっ?」
「……なんでもない」
帳はふてくされたようにそっぽを向く
何で帳がそんな態度なのかわからなかったが、桜の頭では処理しきれない
「と、とりあえず…夕食の準備をしなきゃ」
ふらふらとした足取りながらも持ち場につくと、桜は調理を始める
だが、あまりにも手元が危ういため、結局最後まで帳が側で手伝ってくれた