第12章 ★桜の秘め事(~P182)
しかし、質問の目的はわからなかった
桜が困っていることに八千代は気づいていたようだが、特に質問を重ねる気配はない
「茶を用意しろ」
「お二つでよろしいですか?」
「あぁ」
「かしこまりました」
頭を下げると八千代は踵を返して消えていく
一体何だったのか
まったく意味はわからないが桜はお茶を淹れるため、湯を沸かした
湯飲みにお茶を注ぎ、盆に乗せて八千代の部屋へ向かう
急がないと夕食作りが遅れそうだった
八千代の部屋は少し遠い
普段は人が近づくのを許さないため、部屋の回りには使用人はいなかった
八千代の部屋の前、廊下に正座し、盆を置く
中に居るであろう八千代たちに声をかけようとした瞬間
「あぁん!」
聞きなれない声が耳に届く
一体何が?と首を傾げるが、どうやら八千代の部屋から聞こえたらしい
「んっ……や、ダメ…」
苦しそうな声に桜は狼狽えた
まさか…この声は鈴音様!?ご病気なのでは…
そう思って襖を開けようと手を伸ばした瞬間
「……っ!?」
急に後ろから羽交い締めされ、口を塞がれる
またしても何が起きたか理解できなかった
しかし
「桜、俺だ。声を出すな」
その声を聞いて後ろにいるのは帳だと理解する